〜VSRADと認知症のお話〜
こんにちは画像診断部の放射線技師、iです。
今日は放射線技師の立場から、「認知症」とMRI検査について少しお話ししたいと思います。
今回ご紹介するのは、VSRAD(ブイエスラド)という診断支援システムについてです。これは、MRIを使ってアルツハイマー型認知症の進行度合いを評価するツールなんです。
認知症とその背景
ご存じの方も多いと思いますが、認知症とは、脳の病気や障害によって認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態のことを言います。
日本では、65歳以上の認知症の方は
2012年:約462万人(高齢者の約7人に1人)
2025年には:約650~700万人(高齢者の約5人に1人)と予測されています。(注1)
こうした状況を受けて、近年では新しいお薬(レケンビ・ケサンラ)が登場するなど、認知症に対する医療の進歩が進んでいます。高齢化が進む日本において、認知症に対する理解と早期対応はますます重要になってきています。
認知症の種類とVSRADとは?
認知症にはいくつか種類がありますが、中でもアルツハイマー型認知症がもっとも多く、全体の約70%を占めています。
このタイプは、脳の神経細胞が少しずつ変性していき、脳の一部(特に記憶に関わる部位)が萎縮することで起こると考えられています。
ここで登場するのが VSRAD(早期アルツハイマー型認知症診断支援システム) です。
MRIで撮影した画像データを解析して、海馬・海馬傍回・扁桃体といった部位の萎縮の程度を数値化してくれるソフトです。
萎縮度の目安
VSRADでは、萎縮の程度を以下のように評価します:
0〜1:ほとんど萎縮は見られません
1〜2:やや萎縮が見られる
2〜3:かなりの萎縮が見られる
3以上:強い萎縮が見られ、アルツハイマー型認知症の可能性が高いと判断されます
一般的に、2以上から「有意な萎縮あり」と判断されます。
VSRADの注意点
ただし、VSRADにもいくつか注意点があります。
VSRADの結果だけで認知症と確定診断はできません。
たとえば、脳梗塞後や硬膜下血腫などでも認知症に似た症状が現れることがあります。
こういった病気を見つけるうえでも、画像検査はとても大切です。
最終的な診断には、症状の経過や心理検査など、医師による総合判断が必要です。VSRADはあくまで「診断をサポートするツール」です。
ペースメーカーなど体内に金属や機械がある方は、MRI検査が受けられない可能性があります。
検査時間は約20分。動いてしまうと解析に影響が出てしまうので、できるだけリラックスしていただくのがポイントです!
最後に
今回は「VSRAD」について簡単にご紹介しました。
「最近もの忘れが増えてきたかも…」
「親の様子がちょっと心配…」
そんな時は、どうぞお気軽にスタッフまでご相談ください。
私たち放射線技師も、皆さまの安心に少しでも貢献できるよう努めてまいります!
(注1)厚生労働省 『認知症施策推進総合戦略新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~』より抜粋
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